「全国600以上ある児童養護施設の中で、さんあいの特徴は何ですか?」と聞かれたら、「さんあいは、創設の理念を大切にする施設です。」と私は答えます。さんあいは、県内の児童養護施設で働いていた高瀬美武・範子ご夫婦によって、1976年に神を愛し、人を愛し、土を愛すというキリスト教の三愛精神の理念と「思いやりのある子」を養育目標に掲げて創設されました。私は、創設者ご夫婦の後を引き継いだ3代目の施設長になります。高瀬ご夫婦は私の叔父・叔母にあたりますが、血縁者だから施設を任されたということではなく、私自らが日本社会の中で最も養護の必要な子どもたちの役に立ちたいという思いから、2014年にそれまで25年務めた職場を辞してこの施設に雇ってもらいました。創設者の掲げた理念(ミッション)と養育目標(ビジョン)は、学べば学ぶほど目まぐるしく変化する時代を生きる子どもたちと職員の指針になると感じています。そしてこの理念を大切にし、風化させることなく次世代に継承することが、私に託された大切な役割だと感じています。
社会福祉法人 三愛学園 理事長
髙瀬 一使徒
三愛学園の設立を決意した、昭和50年頃、家族で櫛挽の地に小さないちょうの苗を植えました。
建物が完成した時に、職員と子どもと一緒に、少し成長したいちょうの木を園舎のまわりに1本1本植えました。新園舎に引越した平成20年にもそれらを移植しました。このいちょうは、さんあいのシンボルとなり、この間、多くの子どもと職員の出会いと別れをじっと見守ってきました。そして、これからもずっとここに立って見守ってくれることでしょう。
社会福祉法人 三愛学園 創設者・前理事長
髙瀨 範子
社会福祉法人 三愛学園
児童養護施設 さんあい
名称の由来
「三愛精神」
「三愛精神=神を愛し、人を愛し、土を愛す」という言葉は、デンマークのクリスチャンで教育者でもあるニコライ・グルンドビーが、農業・教育・企業活動の基本理念として提唱し、実践したものです。
日本では大正初期以来、この理念に感銘・影響を受け、農業・教育(特にキリスト教系)・企業活動の創始者の基本理念として取り入れられ、実践されています。
(たとえば、学校・教育機関・団体名及び理念、各種企業・会社名及び理念、農業・キリスト教系の人材養成機関・団体の名称及び理念等に冠せられています。)
児童養護施設さんあいでの実践では、三愛精神を、「神様(聖書)の教えを大切にし、自分自身と周りの人を大切にし、生活全般を大切にする。」と解釈して日々の生活の中に生かしています。また、大切にすることは、感謝することでもあるので、それも同じように強調しています。
「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」
「あなたがして欲しいことを、あなたの隣人にもしてあげなさい」
という聖書の言葉をベースに、職員と子ども、子ども同士の温かい人間関係を通じて、心の安定・社会的自立を支援する。
中期のテーマ(大目標)
「さらに多くの子どもたちを支援するために、事業の質を向上させ、その規模を拡大してゆく。」
テーマに沿った事業計画の6つの基本姿勢
1.「子ども一人ひとりの最善の利益の追求」の取り組み
2.職員にとって最善の職場環境の追求
3.「地域貢献と国内・世界の社会的養護の必要な子どもたちへの貢献」の取り組み
4.「さらに多くの子どもたちに貢献する法人基盤の強化」の取り組み
年 月 日 | |
1976年 (昭和51年) 2月21日 | 社会福祉法人三愛学園の設立許可を受ける |
1976年 (昭和51年) 6月 1日 | 事業開始 名称:「社会福祉法人三愛学園 養護施設三愛学園」 住所:大里郡岡部町大字本郷335番地 定員:30名 |
1978年 (昭和53年) 12月20日 | 共同募金(日本小型自動車振興会)補助により職員宿舎を 増築(2階部分) |
1982年 (昭和57年) 3月10日 | 共同募金(日本小型自動車振興会)補助により講堂を新築 |
1988年 (昭和63年) 4月23日 | 共同募金(日本中央競馬社会福祉財団)補助により児童棟を増築(1階部分) |
1998年 (平成10年) 4月1日 | 児童福祉法の改正により、養護施設から児童養護施設に名称変更 |
2003年 (平成13年) 10月1日 | 地域小規模施設根岸の家 開設 定員6名 施設全体の定員36名に変更 |
2008年 (平成20年) 4月1日 | 新園舎完成 施設移転 名称:「社会福祉法人三愛学園 児童養護施設さんあい」に変更 |
2011年 (平成23年) 3月31日 | 地域小規模施設根岸の家 閉所 |
2011年 (平成23年) 4月1日 | 本園定員35名に変更 |
2015年 (平成27年) 10月1日 | ファミリーホーム「三愛茜の里」定員6名 開設 |
2017年 (平成29年) 4月1日 | 一時保護所「オリーブ」定員6名 開設 |
2019年 (平成31年) 4月1日 | 本園定員36名に変更 |
2020年 (令和2年) 4月1日 | 自立援助ホーム 「三愛子ひつじ寮」定員9名 開設 |
2022年 (令和4年) 3月31日 | ファミリーホーム 「三愛茜の里」閉所 |
2022年 (令和4年) 4月1日 | 一時保護所「男の子オリーブ」開設 (定員6名) |
令和3年6月14日現在
理 事 | 評議員 | ||
1 髙瀬 一使徒 | 理事長 前さんあい施設長 | 1 清水 信浩 | 島村教会牧師 |
2 林 美江 | NPO法人代表理事 | 2 金井 良樹 | 元会社経営者 |
3 平本 実 | さんあい施設長 | 3 宇多村 春恵 | 元後援会会長 |
4 竹内 由記子 | 自営業 | 4 時田 好枝 | 保育所職員 |
5 田中 美佐子 | 自営業 | 5 柳田 幸男 | 医師 |
6 松本 敦子 | 玉淀乳児院前副園長 | 6 須藤 三千雄 | 元嵐山学園施設長 |
7 高瀬 範子 | 三愛学園前理事長 | 7 櫻井 奈津子 | 元大学教授 |
8 菊地 陽一 | 弁護士 |
監 事 | |
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茂木 聡一 | 障がい者福祉施設職員 |
清水 安男 | 元介護老人保健施設事務長 |
第三者委員 | |
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河田 清寛 | 歯科医師 |
森 みどり | 社会福祉士 |
髙瀨一使徒
さんあいは、2008年に実現した園舎移転に際し構想から10年以上の歳月を掛け、施設養育の中で子どもにとって職員にとって最適な園舎はどうあるべきか研究し議論しました。そして現在の長屋のような集団式の小平屋の園舎となりました。 このことは奇しくも、小説「続あしながおじさん」の中に記されています。「続あしながおじさん」は、米国人小説家ジーン・ウエブスターにより1915年「あしながおじさん」の続編として出版されました。前作の主人公であるジュディの大学時代の友人、サリー・マクブライドがジュディの育ったジョン・グリア孤児院(児童養護施設)の責任者を任され施設改革に取り組む姿が描かれています。この物語の中で、サリーがジュディに当てた手紙に以下のような一文があります。
孤児院の内面的な仕事を考えれば、考えるほど、普通の家庭に匹敵する孤児院の唯一様式は、集団式の小平屋に限ると思います。家庭が社会の単位となっている以上は、子どもたちも小さい時から家庭生活の訓練を受けて行かなければなりません。
まさに現在のさんあいの生活様式と理念が100年以上前の小説に児童養護施設の生活様式の理想像として描かれています。さんあいは、園舎が集団式小平屋であることにこだわりました。上下に分断されない空間で生活する。そして一つひとつの独立した平屋が繋ることにより、お隣同士の助け合いと施設としての一体感を保っています。人は環境に影響を受けます。のんびりとした農村の集団式小平屋は、子どもたちと職員の成長に沢山の良い影響を及ぼしていると考えています。
施設長 | 施設長補佐 | 統括主任 | FSW | 主任 | 里親支援 | ケアワーカー | 心理士 | 看護師 | 栄養士 | 事務 | 合計 |
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2 | 1 | 30 | 1 | 1 | 1 | 2 | 42 |